Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ふたつのみち
二つの途
豊島 与志雄
Lisez 二つの途 (ふたつのみち) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 51 102 caractères · 104 écrans
ただ大きな空虚が、大きな中断が、眠りのうらに過しただだ白いものが、ぽかりと口を開いていた。その中に怪しげな姿がつっ立ってくるようだった。彼はそれから眼をそむけた。遠くが見えてきた。青い空、広い野原、静まり返って並んでいる木立、何ものをも肯定する生の息吹き……。彼は大きく息をした。肺尖のあたりがきりきりと痛んで、痰が喉にからまった。彼は顔を渋めた。看護婦が痰吐を取ってくれた。痰を吐き出してしまうと、胸が軽くなった。
木下が室にはいって来た。
「よく眠ったね。」
「ああ。」
それきり黙ってしまった。
彼は木下の全身に対して、訳の分らない反撥を覚えた。長い髪の毛、黒い光りを放ってる眼、先の太い手指、だぶだぶに拡ってるメリヤスの襯衣の袖口、それらから暗い影が発散してくるような気がした。
二人共黙っていた、看護婦が室を出ていっても黙っていた。看護婦と殆んど入れちがいに、信子がはいって来た。彼女は襖を開いて一寸躊躇した。それから静に襖をしめて、火鉢の側に坐りながら炭をつぎ初めた。
先夜のこと、それ以前のこと、飛び飛びの事件を、啓介は思い出した。それらは、静かな時の連続のうちに、険しい巖のように立ち並んでいた。