Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

なかなかしなぬあいつ

仲々死なぬ彼奴

海野 十三

Lisez 仲々死なぬ彼奴 (なかなかしなぬあいつ) de 海野 十三 (うんのじゅうざ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 9 216 caractères · 18 écrans

Aozora Bunko

喜助にはもう何事を望む気持もなかった。誰を待つことも考えられなかった。後半が脱落している書物の、その最後の一行を読みおわったような感じだった。そうなった上は、彼の行くべき道は、誰しもが選ぶたった一つ残されたその道――自殺ということであった。

喜助は自殺しようと決心した。

喜助にとって、自殺することは、障子に手をかけてガラリと開くのと、その容易さに於て余り大差がなく感ぜられた。自殺して、天国の門口で、(おお、とうとうお前も来て呉れたか)と云って老人の胸に抱かれることがどんなにか楽しみであった。彼は堅くそれが出来ることを信じていたのだった。喜助はここで、死ぬ時間のことを考えた。なるべく早く死にたい。老人の葬式が行われるその時間に後を追いたい。乃木大将のことなどが急に思い浮んできて、彼はいい気持だった。(さて自殺の方法であるが……)と彼は頤の尖端を指先でつまんで、脳髄を絞ったのである。一生の思い出となることだから、何とかこう、薬学家らしい堂々たる死に方をしたいと考えた。毒物を盃に盛って、一と息に飲み下だし、盃がまだ卓子の上に、帰らぬ前に既に呼吸が止っているという彼の青酸加里も、実に管々しい毒物には相違なかったけれども、それを実行した先輩も少くないので、独創を尊ぶ喜助の満足を得ることは出来なかった。