Classiques japonais avec furigana
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はくしゃくのかんざし
伯爵の釵
泉 鏡花
Lisez 伯爵の釵 (はくしゃくのかんざし) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 19 403 caractères · 39 écrans
父も娘も、へい、と言って、大方そうだろうと言う。――もう影もなかったのである。父娘はただ、紫玉の挙動にのみ気を奪られていたろう。……この辺を歩行く門附みたいなもの、とまた訊けば、父親がついぞ見掛けた事はない。娘が跣足でいました、と言ったので、旅から紛込んだものか、それも分らぬ。
と、言ううちにも、紫玉はちょいちょい眉を顰めた。抜いて持った釵、鬢摺れに髪に返そうとすると、や、するごとに、手の撓うにさえ、得も言われない、異な、変な、悪臭い、堪らない、臭気がしたのであるから。
城は公園を出る方で、そこにも影がないとすると、吹矢の道を上ったに相違ない。で、後へ続くには堪えられぬ。
そこで滝の道を訊いて――ここへ来た。――
泉殿に擬えた、飛々の亭のいずれかに、邯鄲の石の手水鉢、名品、と教えられたが、水の音より蝉の声。で、勝手に通抜けの出来る茶屋は、昼寝の半ばらしい。どの座敷も寂寞して人気勢もなかった。
御歯黒蜻蛉が、鉄漿つけた女房の、微な夢の影らしく、ひらひらと一つ、葉ばかりの燕子花を伝って飛ぶのが、このあたりの御殿女中の逍遥した昔の幻を、寂しく描いて、都を出た日、遠く来た旅を思わせる。