Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ひみつ

刺青・秘密

谷崎 潤一郎

Lisez 刺青・秘密 (ひみつ) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 32 935 caractères · 66 écrans

Aozora Bunko

月はその一二寸の盛上りに対してさえも、ちゃんと正直にその波の影を砂地へ写して見せている。実際こんな月夜には、一本の針だって影を写さずにはいないだろう。

遥かな沖の方からか、それとも行くての何本も何本も先の磯馴松の奥の方からか、孰方だかよく分らないが、ふと、私の耳に這入って来た不思議な物の音があった。或は私の空耳であるかも知れないけれど、兎に角それは三味線の音のようであった。ふっと跡絶えては又ふっと聞えて来る音色の工合が、どうも三味線に違いない。日本橋にいた時分、乳母の懐に抱かれて布団の中に睡りかけていると、私はよくあの三味線の音を聞いた。―――

「天ぷら喰いたい、天ぷら喰いたい」

と、乳母はいつもその三味線の節に合わせて吟んだ。

「ほら、ね、あの三味線の音を聞いていると、天ぷら喰いたい、天ぷら喰いたい、と云っているように聞えるでしょ、ねえ、聞えるでございましょ」

そう云って乳母は、彼女の胸に手をあてて乳首をいじくっている私の顔を覗き込むのが常であった。気のせいか知らぬが、成る程乳母の云うように「天ぷら喰いたい、天ぷら喰いたい」と悲しい節で唄っている。私と乳母とは、長い間眼と眼を見合わせて、猶も静かにその三味線の音に耳を澄ましている。