Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ひみつ

刺青・秘密

谷崎 潤一郎

Lisez 刺青・秘密 (ひみつ) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 32 935 caractères · 66 écrans

Aozora Bunko

どうしたのか、女はふと立ち止まって、俯向いていた顔を擡げて、大空の月を仰いだ。暗い笠の影の中でほの白く匂っていた頬は、その時急にあの沖合の海の潮の如く銀光を放つかと疑われた。すると、その皎々たる頬の上からきらりきらりと閃きながら、蓮の葉をこぼれる露の玉のように転がり落ちるものがあった。きらりと輝いて何処かへ消えてしまったかと思うと、又きらりと輝いては消える。

「小母さん、小母さん、小母さんは泣いているんですね。小母さんの頬ぺたに光っているのは涙ではありませんか」

私がこう云うと、女は猶も大空を見上げながら答えた。

「涙には違いないけれど、私が泣いているのではない」

「そんなら誰が泣いているのですか。その涙は誰の涙なのですか」

「これは月の涙だよ。お月様が泣いていて、その涙が私の頬の上に落ちるのだよ。あれ御覧、あの通りお月様は泣いていらっしゃる」

そう云われて、私も同じように大空の月を仰いだ。しかし、果してお月様が泣いているのかどうかよくは分らなかった。私は多分、自分は子供であるからそれが分らないのであろうと思った。それにしても、月の涙が女の頬の上にばかり落ちて来て、私の頬に降りかからないのは何故であろう。