Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ぜんさいのかいい

前妻の怪異

田中 貢太郎

Lisez 前妻の怪異 (ぜんさいのかいい) de 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 1 748 caractères · 4 écrans

Aozora Bunko

長崎市の今博多町、中島川に沿うた処に、竹田と云う青年が住んでいた。そこは隣家の高い二階家に遮られて、東に面した窓口から、僅かに朝の半時間ばかり、二尺くらいの陽が射しこむきりで、微暗い湿っぽい家であった。

青年は東京で大学を終えて、暫く山の手に住んでいて帰って来たものであるが、結婚したばかりの美しい妻があり、生活の不安もないので、住宅のことなどはどうでもよかった。従って夫婦の間は情熱的で華かであった。

そのうちに妻が妊娠して、翌年になって男の子を分娩したが、ひどい難産のうえに産褥熱で母体が危険になった。青年は幾晩も眠らないで、愛妻を看護する傍、嬰児のために乳貰いに歩いた。病人は夫と嬰児を抱きしめて、

「死にたくない、死にたくない、私が死んだら、この児はどうして育つでしょう、それに阿郎も、阿郎も」

と云うようなことを云って泣いていたが、数日の後に死んでしまった。

青年は男の手一つで児を育てなくてはならなかったが、それに没頭していては仕事ができない。青年は友人の勧めに従って後妻を迎えた。後妻は心がけの良い女で、己の腹を痛めない児を愛撫した。そして、後妻のなごやかな微笑は、憂鬱な一家を明るくするに充分であった。