Classiques japonais avec furigana
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かご
加護
宮本 百合子
Lisez 加護 (かご) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 16 147 caractères · 33 écrans
そして、最後の角に在る寺の近くまで来かかると、彼女は、急に何ともいえない胸苦しさを覚え始めた。
何かに驚きでもしたように、胸がドキリとしたかと思うと、俄に鼓動が烈しくなり、うっかり動いたら、忽ち倒れてでもしまいそうに、呼吸が迫って来るのである。
鼠色の地味なコートの袂を合わせて胸を押え、お恵さんは、瞬間、どうしていいか、途方に暮れて立澱んだ。四辺には、介抱を頼むような家もなければ、人もいない。
とにかく、凝っとして、落付けなければ、どんなことになるか知れない。先達って中からの経験で、お恵さんはこんな時、安静が何より必要なのを心得ていた。
彼女は、出来るだけ、体のどこにも力を入れないように、足の幅だけ横いざりをして、往来の邪魔にならない道傍に退いた。
何時の間にか、髪の生え際に、ねっとり冷たい汗が滲み出した。げんなりし、節々から力が抜けたようになり、お恵さんは、立ってもいられなくなった。
彼女は、首を垂れ、胸を掻き抱いてそこに蹲(しゃが)んでしまった。
あまり突然な変化で、何事が起ったのか、彼女自身にも解らないほどだった。今までのあらゆる現実は、いきなりふいっと消えてしまい、漠然とした、本能的な、寂しい、疲れた感覚ばかりが、体も心も、一杯に埋めてしまったのである。