Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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オチフルイかいじゅうろうてがらばなし

十二神貝十郎手柄話

国枝 史郎

Lisez 十二神貝十郎手柄話 (オチフルイかいじゅうろうてがらばなし) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 127 035 caractères · 254 écrans

Aozora Bunko

本通りへ出ても人気がなかった。夜が更けているからであった。肩の辺に散っている桜の花弁を、手で払いながら貝十郎は歩いた。(京一郎という男は塩屋の伜だ。……昔の塩屋と来た日には、盛大もない家であったが……)人気がなくても春の夜は気分において賑やかであった。猫のさかっている声などが聞こえた。

(あの歌? ……あんなもの、何んでもありゃアしない。……しかしあの後を知ることが出来たら……)

(よし、俺は本流へぶつかってやろう!)

「面白いな」と声に出して云った。

「負けても勝っても面白い。大物を相手にして争うのだからな」

夜警の拍子木の音がした。

四

「ね。お母様。行かせてください。どうしたって行かなければならないのです」

京一郎は思い詰めた口調で、こうまともに母親へ云った。ここは本所安宅町の、掘割に近い一所に、大きいが古く立っている、京一郎の家であった。その家の奥の座敷であった。更けた夜だのに五月幟が、風になびいている音が聞こえた。近くの家でうっかりして、取り入れるのを忘れたのであろう。

「京一郎やお前はどうしたのだよ、もうそんなことは云わないでおくれ。