Classiques japonais avec furigana
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ちくまがわのスケッチ
千曲川のスケッチ
島崎 藤村
Lisez 千曲川のスケッチ (ちくまがわのスケッチ) de 島崎 藤村 (しまざきとうそん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 81 668 caractères · 164 écrans
あの土のにおいを嗅ぐような気がする。私がつぎつぎに公けにした「破戒」、「緑葉集」、それから「藤村集」と「家」の一部、最近の短篇なぞ、私の書いたものをよく読んでいてくれる君は何程私があの山の上から深い感化を受けたかを知らるるであろうと思う。このスケッチの中で知友神津猛君が住む山村の附近を君に紹介しなかったのは遺憾である。私はこれまで特に若い読者のために書いたことも無かったが、この書はいくらかそんな積りで著した。寂しく地方に住む人達のためにも、この書がいくらかの慰めに成らばなぞとも思う。
大正元年 冬
藤村
その一
学生の家
地久節には、私は二三の同僚と一緒に、御牧ヶ原の方へ山遊びに出掛けた。松林の間なぞを猟師のように歩いて、小松の多い岡の上では大分蕨を採った。それから鴇窪という村へ引返して、田舎の中の田舎とでも言うべきところで半日を送った。
私は今、小諸の城址に近いところの学校で、君の同年位な学生を教えている。君はこういう山の上への春がいかに待たれて、そしていかに短いものであると思う。四月の二十日頃に成らなければ、花が咲かない。梅も桜も李も殆んど同時に開く。