Classiques japonais avec furigana
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なんぼく
南北
横光 利一
Lisez 南北 (なんぼく) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 19 591 caractères · 40 écrans
十四
山々の枯れた姿の上には緑色の霞が流れていた。いつもの雀は早くから安次の新しい小屋の藁条を抜きとっては巣に帰った。が、一疋の空腹な雀は、小屋の前に降りると小刻みに霜を蹴りつつ、垂れ下った筵戸の隙間から小屋の中へ這入っていった。
中では、安次が蒲団から紫色の斑紋を浮かばせた怒った肩をそり出したまま、左右に延ばした両手の指を、縊られた鶴の爪のように鋭く曲げて冷たくなっていた。が、雀は一粒の餌さえも見附けることが出来なかった。で、小屋の中を小声で囀りながら一廻りすると外へ出て来て、また茶畑の方へ霜を蹴り蹴りぴょんぴょんと飛んでいった。
十四
野路では霜柱が崩れ始めた。お霜は粥を入れた小鉢を抱えたまま、
「えらいこっちゃ、えらいこっちゃ。安次が死んどる。熱いお粥食わそう思って持っててやったのに、死んどるわア。」と叫びながら、秋三の家の裏口から馳け込んだ。
お霜の叫びに納戸からお留が出て来た。秋三は藁小屋から飛び出て来た。そして二人が安次の小屋へ馳けて行くと、お霜はそのまま自分の家へ馳けて帰って勘次に云った。
「お前えらいこっちゃ。安次が死によった。折角お粥持っててやったのに、冷とうなって死んどるのやして。