Classiques japonais avec furigana
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はるかなたび
原民喜戦後全小説
原 民喜
Lisez 原民喜戦後全小説 (はるかなたび) de 原 民喜 (はらたみき) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 60 577 caractères · 124 écrans
花
死ぬる二三日前はもう小銭の扱いも面倒くさがっていたが、患ってはいても長い間、几帳面に銭勘定をしてくれたものだ。
財布の内側には二十円なにがし金が残っていた。もっと内側のかすかに含らんでいるところには……何が這入っているのだろうと、私は一つ一つ調べてみた。竹村章一という印の捺された水道料金の受領証、それも昨年の六月分だけ一枚それから四年前の書留の受取、そうした無意味な紙片にまじって、大切そうに半紙に包んだ小さなものが出て来た。私は何だろうと思いながらそれを開けてみた。鹿島神宮武運長久御守……はっとして、眼頭の熱くなるものがあった。
花
「花というものが人間の生活に必要だということをつくづく感じるようになった、以前は何だかつまらないものだと思っていたが……」
柩に入れる花を求めて帰る途中、私の友人はふとそんなことを呟いた。
妻の霊前には花が絶やされなかったが、四十九日になるとあちこちから沢山の花を貰った。仏壇は花で埋れそうであった。雨気の多い日には障子の開けたてに菊の香が動いた。夜一人で寝ていると、いろんな花のけはいが闇の中にちらついて、何か睡眠を妨げるようであった。