Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

めいじんじごく

名人地獄

国枝 史郎

Lisez 名人地獄 (めいじんじごく) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 149 286 caractères · 301 écrans

Aozora Bunko

ある日甚三は裏庭へ出て、黙然と何かに聞き惚れていた。夕月が上って野良を照らし、水のような清光が庭にさし入り、厩舎の影を地に敷いていた。フーフーいうのは馬の呼吸で、コトンコトンと音のするのは、馬が破目板を蹴るのでもあろう。パサパサと蠅を払うらしい、かすかな尻尾の音もした。甚三は縁へ腰を掛け、じっと物の音に聞き惚れていた。ポンポン、ポンポン、ポンポンと、美妙な鼓の正調が、あざやかに抜けて来るからであった。

「ああ本当にいい音だなあ。……本陣油屋の逗留客だというが、何んとマア上手に調べるんだろう。鼓も上等に違えねえ。……『追分一丁二丁三丁四丁五丁目、中の三丁目がままならぬ』とおいらの好きな追分節の、その三丁目の油屋から、ここまで抜けて聞こえるとは、人間業では出来ねえ事だ。追分一杯鳴り渡り、軽井沢まで届きそうだ。それに比べりゃあ俺らの唄う、追分節なんか子供騙しにもならねえ。ああ本当にいい音だなあ」つぶやきつぶやき聞き惚れていた。

この時背戸のむしろを掲げ、庭へはいって来た若者があった。「兄貴!」と突然に声をかけた。甚三の弟の甚内であった。「何をぼんやり考えているな」