Classiques japonais avec furigana
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あかげっと しなあちこち
国枝史郎歴史小説傑作選
国枝 史郎
Lisez 国枝史郎歴史小説傑作選 (あかげっと しなあちこち) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 59 334 caractères · 121 écrans
部屋へ入ってみると、彼女は半死半生の有様で、ベッドに倒れてい、瓦斯ランプから瓦斯が音を立てて洩れていた。O君は感動し、瓦斯を止め、彼女を介抱した。そうして、このことを友人に話した。すると友人は酸を嘗めた時のような顔をし、
「君もやられたのか、僕もやられたよ。ありゃあの女の手でね、君の足音が廊下に聞えた時、瓦斯の栓をひねったのさ」
「そういやァ、瓦斯の臭いが稀薄だったっけ」――そこでO君は、もうその娘に対して感動しないことにして了った。
ところが、その娘には、ほかにP氏という、これもN国の若い医学士のお客があったが、そのP氏までが、O君と、彼女との瓦斯事件を聞くと、気をわるくして、彼女へ興味を持たないことにきめて了った。
しかるにそのP氏の許へ彼女から速達が来て「あなたに逢えない絶望から、わたしは、某日の某時間に自宅で毒薬自殺をします」と書いてあった。
「今度は毒薬をご使用なさると見える。……ご自由に……ベロナールであろうと、モルヒネであろうと勝手に用いて、なるたけ楽に天国へ行くんだね」
と、P氏は笑って呟いたが、矢張り苦になるところから、その日になると、――時間だけはグット遅くらせて――彼女の部屋へ行ってみた。