Classiques japonais avec furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Lisez 夏の花・心願の国 (なつのはな) de 原 民喜 (はらたみき) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 152 816 caractères · 310 écrans
暢気そうに湯のなかで大声で歌っている節まわしは、すっかり職工気どりであった。まだ、顔は子供っぽかったが、躯は壮丁なみに発達していた。康子は甥の歌声をきくと、いつもくすくす笑うのだった。……餡を入れた饅頭を拵え、晩酌の後出すと、順一はひどく賞めてくれる。青いワイシャツを着て若返ったつもりの順一は、「肥ったではないか、ホホウ、日々に肥ってゆくぞ」と機嫌よく冗談を云うことがあった。実際、康子は下腹の方が出張って、顔はいつのまにか二十代の艶を湛えていた。だが、週に一度位は五日市町の方から嫂が戻って来た。派手なモンペを着た高子は香料のにおいを撒きちらしながら、それとなく康子の遣口を監視に来るようであった。そういうとき警報が出ると、すぐこの高子は顔を顰めるのであったが、解除になると、「さあ、また警報が出るとうるさいから帰りましょう」とそそくさと立去るのだった。
……康子が夕餉の支度にとりかかる頃には大概、次兄の清二がやって来る。疎開学童から来たといって、嬉しそうにハガキを見せることもあった。が、時々、清二は「ふらふらだ」とか「目眩がする」と訴えるようになった。