Classiques japonais avec furigana
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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
Lisez 夜明け前 (よあけまえ) de 島崎 藤村 (しまざきとうそん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 205 629 caractères · 408 écrans
お前さまも大きくならっせいたものだ。」
半蔵のところへは、こんなことを言いに寄る出入りのおふき婆さんもある。おふきは乳母として、幼い時分の半蔵の世話をした女だ。まだちいさかったころの半蔵を抱き、その背中に載せて、歩いたりしたのもこの女だ。半蔵の縁談がまとまったことは、本陣へ出入りの百姓のだれにもまして、この婆さんをよろこばせた。
おふきはまた、今の本陣の「姉さま」(おまん)のいないところで、半蔵のそばへ来て歯のかけた声で言った。
「半蔵さま、お前さまは何も知らっせまいが、おれはお前さまのお母様をよく覚えている。お袖さま――美しい人だったぞなし。あれほどの容色は江戸にもないと言って、通る旅の衆が評判したくらいの人だったぞなし。あのお袖さまが煩って亡くなったのは、あれはお前さまを生んでから二十日ばかり過ぎだったずら。おれはお前さまを抱いて、お母さまの枕もとへ連れて行ったことがある。あれがお別れだった。三十二の歳の惜しい盛りよなし。それから、お前さまはまた、間もなく黄疸を病まっせる。あの時は助かるまいと言われたくらいよなし。大旦那(吉左衛門)の御苦労も一通りじゃあらすか。