Classiques japonais avec furigana
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むゆうびょうしゃのし
夢遊病者の死
江戸川 乱歩
Lisez 夢遊病者の死 (むゆうびょうしゃのし) de 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 11 121 caractères · 22 écrans
それは幅の広い地下穿きらしいもので、その辺をやたらに歩き廻ったと見えて、縦横無尽の跡がついている。そこで、刑事の一人がそれを追って行って見ると、不思議なことには、足跡は彦太郎の家の縁側から発して、又そこへ帰っていることが分った。そして、縁側の型ばかりの沓脱石の上に、その足跡にピッタリ一致する古い桐の地下穿きがチャンと脱いであったのである。
最初刑事が足跡を検べ始めた頃に、彦太郎はもうその桐の古下駄に気がついていた。彼は父親の死体を発見してから一度も家の中へ這入ったことはないのだから、その足跡は昨夜ついたものに相違ないが、とすると、一体何人がその下駄を穿いたのであろうか。……
そこで、彼はやっとある事を思当ったのである。彼はハッと昏倒し相になるのをやっと耐えることが出来た。頭の中でドロドロした液体が渦巻の様に回転し始めた。レンズの焦点が狂った様に、周囲の景色がスーッと目の前からぼやけて行った。そして、そのあとへ、あの机の上の重い文鎮をふり上げて、父親の脳天を叩きつけようとしている、自分自身の恐ろしい姿が幻の様に浮んで来た。
「逃げろ、逃げろ、さあ早く逃げるんだ」