Classiques japonais avec furigana
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あやかしのつづみ
夢野久作怪奇幻想傑作選 あやかしの鼓
夢野 久作
Lisez 夢野久作怪奇幻想傑作選 あやかしの鼓 (あやかしのつづみ) de 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 76 558 caractères · 153 écrans
「あやかしの鼓とお別れのお祝いですから」
というので無理に盃をすすめられたことを思い出した。
「もうお一つ……」
とニッコリ白い歯を見せた未亡人の眼に含まれた媚……それをどうしても飲まぬと云い張った時、飲まされた「酔いざまし」の水薬の冷たくてお美味しかったこと……。
それから先の私の記憶は全く消え失せている。只あおむけに寝ながらジッと見詰めていた電燈の炭素線のうねりが不思議にはっきりと眼に残っている。
私は酔いたおれて鶴原家に寝ているのだ。
「失策った」と私は眼を開いて夜具の襟から顔を出した。
さっきの未亡人の室に違いない。只電燈に桃色のカバーがかかっているだけが最前と違う。耳を澄ますとあたりは森閑として物音一つない。
「ホホホホホホホホホ」
と不意に枕元で女の笑い声がした。私は驚いて起きようとしたが、その瞬間に白い手が二本サッと出て来て夜着の上からソッと押え附けた。同時にホンノリと赤い鶴原未亡人の顔が上からのぞいてニッタリと笑った。溶けそうな媚を含んだ眼で私を見据えながら、仄かに酒臭い息を吐いて云った。
「駄目よ。もう遅いわよ……諦らめて寝ていらっしゃいオホホホホホホホ」