Classiques japonais avec furigana
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あやかしのつづみ
夢野久作怪奇幻想傑作選 あやかしの鼓
夢野 久作
Lisez 夢野久作怪奇幻想傑作選 あやかしの鼓 (あやかしのつづみ) de 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 76 558 caractères · 153 écrans
私はいきなり土下座した。
「やっぱりお前だった。……よく来た……待っていた……この金で身なりを作って明日の夜中過ぎ一時頃にわたしの室にお出で。小潜りと裏二階の下の雨戸を開けておくから。内緒だよ」
と云いつつ老先生は私の手にハンケチで包んだ銀貨のカタマリを置いて、サッサと帰って行かれた。その銀貨の包みを両手に載せたまま、私は土に額をすりつけた。
その夜は曇ってあたたかかった。
植木職人の風をした私は高林家の裏庭にジッと跼んで時刻が来るのを待った。雨らしいものがスッと頬をかすめた。
……と……「ポポポ……プポ……ポポポ」という鼓の音が頭の上の老先生の室から起った。
私はハッと息を呑んだ。
「失策った。あの鼓が焼けずにいる。兄が老先生に送ったのだ。イヤあとから小包で私へ宛てて送り出したのを、老先生が受け取られたのかな……飛んでもない事をした」
と思いつつ私は耳を傾けた。
鼓の音は一度絶えて又起った。その静かな美しい音をきいているうちに私の胸が次第に高く波打って来た。
陰気に……陰気に……淋しく、……淋しく……極度まで打ち込まれて行った鼓の音がいつとなく陽気な嬉し気な響を帯びて来たからである。