Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

だいぼさつとうげ

大菩薩峠10

中里 介山

Lisez 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) de 中里 介山 (なかざとかいざん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 285 635 caractères · 558 écrans

Aozora Bunko

それが、茂太郎の額にのせられながら泳いでいる般若の面だとは、海女は知りません。

十三

清澄の茂太郎は、海へ溺れる時に、その大切に小脇にしていた般若の面をぬらすまいとして、頭の上へのせました。

ちょうど、額へかぶせて頭を隠しているものですから、その形で泳いでいると、どうしても悪竜が一つ、海の中を渡って来るとしか見えません。

残怨日高の夜嵐といったような趣を、夜の滄海の上で、不意に見せられた時には、獰猛なる海女といえども、怖れをなして逃げ去るのは当然でしょう。

そこで、浜に泳ぎついたというよりは、波に任せて、そっと持って来て置いてもらった茂太郎は、極めて従容として、砂浜の上にすっくと立ちました。

海のおばさんの丸くなって逃げて行く後ろ影を、模糊の間にながめながら、茂太郎は、ぬれた身体を自分から顧みると、どうしても、その眼が、さいぜん海女が焚き残したところの、石塔の前の焚火のところに向わないわけにはゆきません。

般若の面を頭へのせたままで、茂太郎は焚火のところへ寄って来ました。

「卒塔婆が燃えてらあ、勿体ねえな」

しかし、卒塔婆のほかには、多くの燃料がなかったものですから、子供心にも勿体ないと知りつつ、その卒塔婆の折れを増しくべて、火の勢いを盛んにしてしまいました。