Classiques japonais avec furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
Lisez 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) de 中里 介山 (なかざとかいざん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 285 635 caractères · 558 écrans
「いけないよ、いけないよ、姉や、そっちへ行っちゃいけないよ」
海女は、兵部の娘の前に立ちふさがるようにして、小手を振りました。
「どうして」
「どうしてたって、お前様……」
海女は年の頃三十よりは若いでしょう。見得も、外聞も、すっかり忘れて、
「お前様、これより先へ行ってはいけませんよ、わたしと一緒に引返しなさい、早く、早く」
「どうしてなの……」
「海竜が出たよ、海竜が……」
「海竜……」
「ああ、海竜があの塔婆の浜のところへ出たよ、こんな角を二本生やしたのが」
海女は後ろの方を指さした手を、あわただしく自分の額の上にかざして見せました。
「海竜って、何なの」
「海の中にいる魔物さ、海の中にすんでいるおろちのことだよ」
「だって、何も見えないじゃないの」
「海ん中にいるから見えないけれど、底をくぐってどこへ出るか知れやしない、そこんとこらあたりへ角を出すかも知れないから、早くお逃げなさい、一緒に」
「何かの間違いじゃないの……」
「間違いどころか、たしかに見たんだよ、こんな角を二本生やした恐ろしい海竜」
海女は二度まで、指を額の上にあてがって、その形をして見せ、しきりに自分の恐怖を、相手方に移そうとつとめるらしいが、兵部の娘にはいっこう利き目がなく、