Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
だいぼさつとうげ
大菩薩峠19
中里 介山
Lisez 大菩薩峠19 (だいぼさつとうげ) de 中里 介山 (なかざとかいざん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 319 771 caractères · 617 écrans
「おーい」
あちらでも、
「おーい」
すすき野原の中から、こだまを返して、返事はあるが、あちらでは手を振る人もなければ、ひらめかす笠もあるではない。乗物はずんずんと離れて進んで、すすき野原の中へ、見えつ、隠れつ、行く手は大和、河内の山、そこへ没入してしまうげに見える。
「おーい」
竜之助は何と思ってか、突然に腰かけの石を立って、二三歩進み出し、また笠を手強く振って、
「おーい」
こんどは返事がありません。返事のないことは、もはや、さいぜんの乗物がすすき野原を打過ぎて、大和、河内の山の中へ没入してしまった証拠です。
それと知りつつ竜之助は、またも二歩と三歩と進んでみましたが、もうおとなうものは、谷川のせせらぎのほかは何もない。
茫然として、そこに立ちつくしていると、
「おーい」
今は人を呼びかけた身、今度は後ろから人に呼びかけられるらしい声がする。
「何だ」
「おーい」
「おーい」
相呼び、相答うる双方の声はまだ遠いのに、不意に竜之助の肩に後ろから手をかけた者がある。その手は軟らかい白い手でありました。
「あなた」
「誰だ」
「どちらへいらっしゃるの」
「どこへ行こうと……」