Classiques japonais avec furigana
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てんぽうのひこうじゅつ
天保の飛行術
野村 胡堂
Lisez 天保の飛行術 (てんぽうのひこうじゅつ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 14 024 caractères · 28 écrans
長物語を終って、ガックリとお通は美しい片面を伏せるのでした。
「それは心得た、きっと届けてやる、安心するが宜い」
「そして一刻も早くこの山を脱け出して下さい、あなたに万一の事があっては」
「それも心得ている、――が、気を確かに持て、お役目が済めば、お前を江戸へつれて行ってやる、――加州領へ入ってから、いやな事ばかりだったが、お通さん、――お前に逢ってからは、この私も生甲斐があるように思った」
「有難う清作さん、――この私を、一度はあの、悪党の鶴次郎と夫婦約束までした女と知っても――」
「なんの、それしきの事、二十何年も山の中に住めば、狐も猿も恋しくなる、それが人情だ、――尤も江戸の真ん中から来たこの私の眼にも、お前はこの上もなく美しく、なつかしく映った、――これは山の中に住んだせいではない」
「こんな顔でも」
「お前の顔――私は右半分しか見ないが、その右半分の美しさは、此の世のものとも思われない」
「左半分の恐しさ、醜さを、あなたは――」
「俺は知らない、お前を介抱して居る時も、お前が気を喪って居る時も、左半分は見なかったが」
「では、私が死んでも見ないで下さい」