Classiques japonais avec furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lisez 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 11 954 caractères · 24 écrans
仲人は家主の老人、箪笥も長持もない嫁は、隣から隣へ、ドブ板を踏んで来るだけのことで、世話の焼けないことも無類ですが、その代り張り合いの無いことも此上なしです。
日が暮れて、やがて嫁御寮が乗込んで来ようという時、同じ牙彫職仲間の友吉というのが、たった一人の客として、あわて気味に飛込んで来ましたが、
「おい綾麿、知ってるかい、いよいよ五つ目の蠑螺堂が取こわしだぜ」
「えッ、本当かい、それは?」
仏寺、経巻、仏像の廃棄や捨売が流行った時ですから、綾麿も気にはかけて居りましたが、こう言われるとさすがにギョッとしました。
「本当にも嘘にも、俺は此眼で見て来たんだ。それに、あの百観音を二束三文で古金屋に払下げ、炭俵に詰めて枕橋へ持って行ったぜ」
「どうするんだ、それを?」
「知れたこと、あんなものを、当節買手が付くものか。焼いて金箔の金を取るんだとよ。今日一日に五六十俵は焼いたろう、残ったのは土左衛門見たいに庭に積んであったぜ。ああなっちゃ観音様もだらしがねえが、見ている俺は涙がこぼれたぜ」
友吉はそういって、泣く真似などをして見せるのでした。
「そうか、――俺はちょいと行って見て来る、――済まねえが、お前、暫らく嫁の来るのを待つように、隣へ声を掛けてくれ」