Classiques japonais avec furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lisez 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 13 713 caractères · 28 écrans
人に受け容れられそうもない芸術的なピアノ曲などを作って、何時まで経っても貧乏な、一ピアニストで甘んじているといった風の男でした。
併し、この素朴で真面目なHの人柄は、北海道娘の寿美子には、何よりも良い友達でした。Hの訪問が頻繁になるにつれて、寿美子とHとの間は、眼に見えて、落下公式的な速度で接近して行ったのです。
「寿美子さん」
或る日、小杉卓二は到頭切り出しました。
この上我慢していると、何んか気が変になりそうだったのです。
「何アにお兄様」
「近頃寿美子さんは、大変H君と仲が良いようだね」
小杉卓二はニヤニヤ笑っておりますが、言葉には妙にトゲがあります。
「え、あの方、でも良い方でしょう」
「そりゃ良い男さ――良過ぎる位さ、一向面白くもない新即物主義のピアノ曲などを作って、十年一日の如く貧乏している位だから、――善人でなければ出来ない芸当さ」
「芸術家はそれが良いんじゃありませんか、お兄様」
「物の本にはそう書いてあるね――ところで」
「お兄様はお兄様でいいんでしょう、それだけ成功していらっしゃるから――でもHさんはHさんで、別な境地も誇りもあると思いますが、何う?」