Classiques japonais avec furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lisez 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 11 830 caractères · 24 écrans
二
そして、
「あの、お代は?」
と極り悪そうに付け加えるのです。
「それには及びませんよ、口開けですから」
東野南次があわてて手を振りましたが、
「でも、少いかもしれませんが――」
幽里子はそういって、百円札を一枚、使い残りのレター・ぺーパーの下へ押込むように、身をかえしてヒラリと扉の外へ出たのです。
残るのは、ほのかな薫風だけ、東野南次は夢見るような心持でそれを見送りました。
二
なんということだ、――東野南次は何べんかこう繰り返しながら、狭い部屋の中をグルグル廻っておりました。
その翌る日も、そのまた翌る日も、最初の女客幽里子の素晴らしい出現の記憶と、二度とは来そうもない失望感とにさいなまれて、南次は動物園の猛獣のように、狭い部屋の中を――何やら期待に燃えながら、一日一パイ歩き続けていたのです。
が、それから七日目、この期待は見事に酬いられました。
「御免遊ばせ」
あの爽やかな声が、またもや扉の外に立ったのです。
「どうぞ」
今度はもう英語も出ませんでした。飛付くように此方から扉を開けると、先の日と同じく古雅な青磁色の洋装で、幽里子はニッコリ立っているではありませんか。