Classiques japonais avec furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lisez 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 10 447 caractères · 21 écrans
「明日の御輿入と承わって、やっとの思いで此処まで辿り着きましたが、最早精も根も尽き果てました」
「あれ、死んではいけない、――私と一緒に――」
京姫はこの死に行く男と一緒に、一体何処へ行こうと言うのでしょう。
「その思召は有難う御座いますが、それでは私の一分が立ちません、さらばで御座います」
「お待ち、私も一緒に行こう」
「飛んでもない、姫君様」
「でも私は、明日の祝言が嫌で嫌でならないのだから」
徳川の家を護ろうとする大きな政略の犠牲となって、見も知らぬ鳥取の城主へ嫁ぐのは、京姫に取っては我慢の出来ない恐しさでもあり、そしてやるせない憤懣でもあったのでしょう。
この男と一緒に、江戸の陋巷の真ん中へでも、人里離れた山の奥へでもと、一図に思い込む京姫の望みは、素より遂げられる筈もありません。
その間に御殿の中は騒ぎ始めました、多分姫の姿が見えないのに気付いたのでしょう。
姫は漸く気を取り直すと、そのままめり込むように崩折れた村松金之助を励まし後日を約束してその場から立去らせ、踵を返して騒ぎ立てる人々の中へ、いとも冷い――がこの上もなく美しく取りすました顔を持って来るのでした。