Classiques japonais avec furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lisez 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 11 531 caractères · 23 écrans
ところで一方夜の国の恋人、第四次元の世界の錦小路苗子は、最初のうちは神話の女神のように恋と没交渉でしたが、新聞記者京極三太郎の熱心な訪問を受けているうちに、その氷のような心臓が、次第に熱を帯びて活動を始め、幾ヶ月かの我慢強い努力の後には、京極三太郎と同じ感情に鼓動するようになって居りました。
二人は何の妨げも無しに、粗末な客間で狭い庭前で、倦むことを知らない会見を続けました。概念的な白と黒とのニュアンスが醸し出す、不思議な舞台装置の外には、なんの補足するところもありませんが、錦小路家の令嬢苗子と、新聞記者京極三太郎の恋は、この未来派の舞台装置の中に、概念的に、そのくせ強烈に、燃焼して行ったのです。
それは矢留瀬苗子の場合に於ける如き、末梢的に気取った恋では無く、女学生趣味の高尚癖に誤られた逢瀬でもなく、直ちに官能と官能、霊と霊との交渉まで飛躍し発展して行くのでした。
第四次元の世界の恋は、蛾と蛾の恋のように蠍と蠍の恋のように、それは命がけの恋で全身的な恋でした。気兼や遠慮や気取りや偽善のために、機会と幸運とを取逃すような浮世的な第二義的な恋ではなく、さながらスクリーン一杯の恋であり、クローズアップされた恋だったのです。