Classiques japonais avec furigana
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きぐう
奇遇
Lisez 奇遇 (きぐう) de Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 6 238 caractères · 13 écrans
「さてそこへ上って見ると、案の定家も手広ければ、主の翁も卑しくない。その上酒は竹葉青、肴は鱸に蟹と云うのだから、僕の満足は察してくれ給え。実際僕は久しぶりに、旅愁も何も忘れながら、陶然と盃を口にしていた。その内にふと気がつくと、誰か一人幕の陰から、時々こちらを覗くものがある。が、僕はそちらを見るが早いか、すぐに幕の後へ隠れてしまう。そうして僕が眼を外らせば、じっとまたこちらを見つめている。何だか翡翠の簪や金の耳環が幕の間に、ちらめくような気がするが、確かにそうかどうか判然しない。現に一度なぞは玉のような顔が、ちらりとそこに見えたように思う。が、急にふり返ると、やはりただ幕ばかりが、懶そうにだらりと下っている。そんな事を繰り返している内に、僕はだんだん酒を飲むのが、妙につまらなくなって来たから、何枚かの銭を抛り出すと、々また舟へ帰って来た。
「ところがその晩舟の中に、独りうとうとと眠っていると、僕は夢にもう一度、あの酒旗の出ている家へ行った。昼来た時には知らなかったが、家には門が何重もある、その門を皆通り抜けた、一番奥まった家の後に、小さな綉閣が一軒見える。