Classiques japonais avec furigana
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おんなけいず
婦系図
泉 鏡花
Lisez 婦系図 (おんなけいず) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 172 760 caractères · 343 écrans
室内を横伝い、まだ何か便り無さそうだから、寝台の縁に手をかけて、腰を曲げるようにして出たが、扉の外になると、もう自分でも足の確なのが分って、両側のそちこちに、白い金盥に昇汞水の薄桃色なのが、飛々の柱燈に見えるのを、気の毒らしく思うほど、気も爽然して、通り過ぎた。
どこも寝入って、寂として、この二三日めっきり暑さが増したので、中には扉を明けたまま、看護婦が廊下へ雪のような裙を出して、戸口に横わって眠ったのもあった。遠くで犬の吠ゆる声はするが、幸いどの呻吟声も聞えずに、更けてかれこれ二時であろう。
厠は表階子の取附きにもあって、そこは燈も明いが、風は佳し、廊下は冷たし、歩行くのも物珍らしいので、早瀬はわざと、遠い方の、裏階子の横手の薄暗い中へ入った。
ざぶり水を注けながら、見るともなしに、小窓の格子から田圃を見ると、月は屋の棟に上ったろう、影は見えぬが青田の白さ。
風がそよそよと渡ると見れば、波のように葉末が分れて、田の水の透いたでもなく、ちらちらと光ったものがある。緩い、遅い、稲妻のように流れて、靄のかかった中に、土のひだが数えられる、大巌山の根を低く繞って消えたのは、どこかの電燈が閃いて映ったようでもあるし、蛍が飛んだようにも思われる。