Classiques japonais avec furigana
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こをつれて
子をつれて
葛西 善蔵
Lisez 子をつれて (こをつれて) de 葛西 善蔵 (かさいぜんぞう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 16 970 caractères · 34 écrans
それには年老った主人夫婦も当惑して「それでは今晩一晩だけだったら都合しましょう」と云うことにきまったが、併し彼の長女は泣きやまない。
「ね、いゝでしょう? それでは今晩だけこゝに居りますからね。明日別の処へ行きますからね、いゝでしょう? 泣くんじゃありません……」
併し彼女は、ます/\しゃくりあげた。
「それではどうしても出たいの? 他所へ行くの? もう遅いんですよ……」
斯う云うと、長女は初めて納得したようにうなずいた。
で三人はまた、彼等の住んでいた街の方へと引返すべく、十一時近くなって、電車に乗ったのであった。その辺の附近の安宿に行くほか、何処と云って指して行く知合の家もないのであった。子供等は腰掛へ坐るなり互いの肩を凭せ合って、疲れた鼾を掻き始めた。
湿っぽい夜更けの風の気持好く吹いて来る暗い濠端を、客の少い電車が、はやい速力で駛った。生存が出来なくなるぞ! 斯う云ったKの顔、警部の顔――併し実際それがそれ程大したことなんだろうか。
「……が、子供等までも自分の巻添えにするということは?」
そうだ! それは確かに怖ろしいことに違いない!
が今は唯、彼の頭も身体も、彼の子供と同じように、休息を欲した。