Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
Lisez 季節のない街 (きせつのないまち) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 201 379 caractères · 394 écrans
父は母を責めなかった。不足の金額は長男に貸した、と聞いたとき、彼女の顔をじっとみつめた。それは奇妙な、いま初めて会う人を見るような眼つきであった。けれどもその瞬間から、父は母に対して口をきかなくなった。母は弁明し、長男の窮状を訴え、金は必ず返る、と繰り返したが、父は聞いているようすもなかった。
病気は自分で治す、二度も治したんだから自信がある、決して心配するなと云い続けたが、父のは奔馬性とかいう悪性のものだったそうで、三度も大量の喀血をし、四たびめのときに、血が気管に詰ったため窒息して死んだ。
学校が冬休みにはいっていたから、辰弥はその臨終を見た。初めに吐いた血を、父は新聞紙で隠しながら、まだ死ねない、いま死んでは困る、いまは困る、と歯をくいしばって叫んだ。
「なにかの本で読んだんですが、夏目漱石が死ぬときにも、同じようなことを云ったそうです」と辰弥は云った、「新聞に書いている小説を中断させたくないためか、小さい子供たちに心が残ったのか、とにかく、いま死ぬことはできない、というようなことを云ったそうです」
たんば老人は眉も動かさず、穏やかな顔でゆっくりと頷いた。