Classiques japonais avec furigana
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いえ
家
島崎 藤村
Lisez 家 (いえ) de 島崎 藤村 (しまざきとうそん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 141 411 caractères · 285 écrans
往時は大きな漁業を営んで、氷の中にまで寝たというこの老人の豪健な気魄と、絶念の早さとは年を取っても失われなかった。女達の親しい笑声が起った。そこへ種夫と新吉が何か膳の上の物を狙って来た。
「御行儀悪くしちゃ不可よ」とお雪が子供を叱るように言った。
「種ちゃんか。新ちゃんも大きく成った。皆な好い児だネ」と老人は酔った眼で二人の孫の顔を眺めて、やがて酒の肴を子供等の口へ入れてやった。
「コラ」と母は畳を叩く真似した。
子供等は頬張りながら逃出して行った。下婢が洋燈を運んで来た。最早酒も沢山だ、と老人が言った。食事を終る毎に、老人は膳に対して合掌した。
その晩、残った仕事があると言って、三吉が二階へ上った頃は、雨の音がして来た。彼は下婢に吩咐けて階下から残った洋酒を運ばせた。それを飲んで疲労を忘れようとした。
お雪も幼い銀造を抱いて、一寸上って来た。
「どうだ――」と三吉はお雪に、「この酒は、欧羅巴の南で産る葡萄酒だというが――非常に口あたりが好いぜ。女でも飲める。お前も一つ御相伴しないか」
「強いんじゃ有りませんか」とお雪は子供を膝に乗せて言った。
雨戸の外では、蕭々降りそそぐ音が聞える。