Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

いえ

家

島崎 藤村

Lisez 家 (いえ) de 島崎 藤村 (しまざきとうそん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 126 748 caractères · 254 écrans

Aozora Bunko

庭の片隅には、浅間から採って来た植物が大事そうに置いてあった。それを直樹は登山の記念として、東京への好い土産だと思っている。

この温和な青年の顔を眺めると、三吉は思うことを言いかねて、何度かそれを切出そうとして、反って自分の無法な思想を笑われるような気がした。

「直樹さん、すこし僕も感じたことが有って、吾家は解散して了おうかと思います」と三吉は話の序に言出した。

直樹は答えなかった。そして、深い溜息を吐いた。常識と同情とに富んだこの青年の柔嫩な眼は自然と涙を湛えた。

「君はどう思うか知らんが」と三吉は言淀んで、「どういうものか家がウマくいかない……僕の考えでは、お雪は生家へ帰した方が可いかと思うんです」

「しかし、兄さん」と直樹は涙ぐんだ眼をしばたたいて、「それでは姉さんが可哀想です。もし、そんなことにでも成れば、一番可哀想なのは房ちゃんじゃ有りませんか」

「房は可哀想サ」と三吉も言った。

長いこと二人は悄然として、言葉もかわさずに庭を眺めていた。

お雪は食事の用意が出来たことを告げに来た。それを聞いて、直樹は起ちがけに、三吉に向って、

「ああ――私のように弱い者は、今のような御話を聞くと、最早何事も手に付ません。