Classiques japonais avec furigana
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いえ
家
島崎 藤村
Lisez 家 (いえ) de 島崎 藤村 (しまざきとうそん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 126 748 caractères · 254 écrans
あの影に成ったところで、早速撮って貰おう」と正太も注意する。
「いえ――ナニ――私はすこし注文が有るで」
と言って、嘉助は皆なの見ている前を通って、一番日影に成りそうな場処を択んだ。丁度旦那と大番頭とは並んだ。待設けた雲が来た。若い手代の幸作、同じく嘉助の忰の市太郎、皆な撮った。
三吉が出発の日は、達雄夫婦を始め、正太、お仙まで、朝のうちに奥座敷へ集った。三吉も夏服に着更えて、最早秋海棠などの咲出した裏庭を皆なと一緒に眺めながら、旅の脚絆を当てた。ここへ来がけに酷く馬車で揺られたと言って、彼は背中のある部分だけ薄く削取られたような上着を着ていた。
三吉がこの山の中で書いたものは――達雄夫婦の賜物のように――手荷物の中に納めてあった。彼の心は暗い悲惨な過去の追想から離れかけていた。その若い思想を、彼は静かなところで纏めてみたに過ぎなかった。
通いで来る嘉助親子も、東京の客が発つというので、その朝は定時より早く橋を渡って来た。
朝飯の後、一同炉辺で別離の茶を飲だ。姉は名残が尽きないという風で、
「でも、よく来てくれた。何時でも来られそうなものだが、なかなか思うようにはいきません」