Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
さむはし
寒橋
山本 周五郎
Lisez 寒橋 (さむはし) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 18 416 caractères · 36 écrans
「――もしおたみが放したらな」
「おたみはこれから嫁にゆく躯ですもの、わけを云えば放すわよ……ふふ」
お孝は泣き声で含み笑いをした。
「お文ちゃんがむくれるわね、いつか云ってたとおりになるんだもの、……あんたはいまにその赤んぼも引取るっていうんでしょって、……これだけは本当のこと云えないんだから、あのひときっとまっ赤になって怒るわよ」
その晩は絶えて久しく、そして二人がいっしょになってから初めて、夜具は一つしか敷かれなかった。……桃の節旬も近いというのに、春寒というのだろう、珍しく冷える夜で、火の番の柝の音が遠く冴えて聞えた。
夜半をずっと過ぎてから、時三がそっと起きて来て、物音を忍ばせて仏壇の前へゆき、そこへきちんと坐って、頭を垂れた。
「――有難う、お父つぁん」
彼は低い声でこう囁いた。
「――もうこれっきりです、決してもうあんなことはしません、見ていて下さい、……私はきっとお孝を仕合せにします」
彼は腕で眼を掩った。咽び泣きの声が彼の喉をついてもれた。ずっと遠くで、火の番の柝の音が冴えて聞えた。