Classiques japonais avec furigana
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えいがじだい
寺田寅彦随筆集 第二巻
寺田 寅彦
Lisez 寺田寅彦随筆集 第二巻 (えいがじだい) de 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 207 099 caractères · 419 écrans
比較言語学における統計的研究法の可能性について
言語の不思議は早くから自分の頭の中にかなり根深い疑問の種を植え付けていたもののようである。六七歳のころ、始めて従兄から英語の手ほどきを教えられた時に、最初に出会ったセンテンスは、たしか「猿が手を持つ」というのであった。その時、まず冠詞というものの「存在理由」がはなはだしく不可解なものに思われた。The(当時かなで書くとおりにジーと発音していた)が、至るところ文章の始めごとに繰り返されて出現する事が奇妙に強い印象を与えた事を記憶する。自分の手のことを「持つ」というのもおかしかったが、これが「手を」の前に来る事がはなはだしく不思議であった。
今になって考えてみると、このジー、ジーという音の繰り返しは、当時の幼い頭の中に、まだ夢にも知らなかった、遠い遠い所にある、一つの別な珍しい世界からのかすかなおとずれのように響いたのかもしれない。それはとにかく、当時に感じた漠然たる不思議の感じは、年を経て外国語に対する知識の増すとともに、次第に増しはしても、決して減りはしなかった。ただそれが次第に具体的な疑問の形をとって意識されて来たのである。しかし四十余年前に漠然と感ぜられた疑問は今日に至っても依然たる不可解の疑問である。