Classiques japonais avec furigana
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やまとむら
山と村
木暮 理太郎
Lisez 山と村 (やまとむら) de 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 4 705 caractères · 10 écrans
一度噂が立てば、遠く其姿を認めたという人、或は跡をつけられたという人の数は、一人増し二人増して行くが、終に危害を加えられたという者もなく、野火の消えるように噂も絶えてしまう。
赤城に雪が降るのは大抵十二月の下旬である。其頃村の行事の一として、若い者は「赤城の餅食い」に行くのであった。山麓三夜沢に在る赤城神社に詣で、御師の家に一泊し、御供米として白米一升及び若干の賽銭を納め、其夜は餅を振舞われ、翌朝御札を授かって帰村するのである。目的は今年の作柄に就て謝恩の奉告をなし、併せて翌年の豊作を祈願するのが主で、今でもまだ行われているらしい。信心深い者は翌日大洞の奥宮に参詣する。季節が季節だけに吹雪に閉じ込められることがある。幸なことには沼の氷切りに働く大夫が大勢登っているので、其小屋に泊めて貰えるし、降雪の範囲も頂上に限られている為であろう、遭難する者は極めて稀であった。
降雪期に入れば山は殆ど毎日のように雲の綿帽子を冠っている。頂に少しの雲でも屯していることは、夏の外は遅くも午後には風の吹く予報である、朝は静穏で雲の輪郭がはっきりしていても、上の方から次第に崩れて、真綿を引き伸したように垂れ下ると、冷たい北西の風が人の肌を刺すように吹きすさむ。