Classiques japonais avec furigana
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やまでらのかい
山寺の怪
田中 貢太郎
Lisez 山寺の怪 (やまでらのかい) de 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 6 147 caractères · 13 écrans
それは何の木とも名は判らないが、桜のような、椿のような、木蓮のような、牡丹のような、梅のような、躑躅のような、そうした花が一面に咲いていた。天鵞絨の峰はその前に仮山のように畝りあがっていた。そこは窪地のようになって遠くの見はらしはなかったが、お花畑のように美しい場所であった。花の木には鶯のような小鳥が枝から枝を飛んでいた。雲雀のようにきりりんりんと鳴きながら空にあがって往く小鳥もあった。空は霞みだってあがって往った鳥は、暫く姿を消して鳴声ばかり聞えていたが、やがて勢よく斜におりて来て花の中に隠れた。林の下は青毛氈を敷いたように芝草が生えていた。武士はこんな佳い処があるのに主翁は何んのよまよいごとを云ってるだろうかと思った。武士は下にさえこんな佳い処があるから、頂上にはまだ佳い処があるだろうと思った。武士は早く頂上へ往って日の暮れないうちに旅館へ帰ろうと思った。彼は前の方を見た。芝草のような草の間を流れている水の澄みきった流れが前を横ぎっていて、それには一枚石が橋のように架っていた。武士はその石を渡って花の林の中へ入って往った。花の枝から枝に移る小鳥、空にあがって往く小鳥の声、脳に浸みるような花の匂。