Classiques japonais avec furigana
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あずさがわのじょうりゅう
山岳紀行文集 日本アルプス
小島 烏水
Lisez 山岳紀行文集 日本アルプス (あずさがわのじょうりゅう) de 小島 烏水 (こじまうすい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 138 795 caractères · 274 écrans
蝙蝠岳から来る瀬が一筋、ここで合う。これを上氷瀬という、バロメートルを見ると、実に海抜二千三百米突、あまり高過ぎるから多分狂っているのであろう。
深潭が、また一つある。川は、底を傾けて、水を震うので、森の中まで、吹雨が迷い込んで、満山の樹梢を湿す。白樺や五葉松は、制裁もなければ、保護もなく、永えに静粛に、そして厳格に、造化の大法を、寸分容赦なく行ってゆくように、この自然の王国から、定まれる寿命を召されて、根こそぎに、谷の中にたわいなく倒れている。床几代りにまた腰をかけて、少し休む。河原の砂に、点々として、爪痕のあるのは、水を飲みに下りた、鹿の足痕であると、猟師はいう。同行の高頭君は、退屈紛れに、杖を沙上に揮って、それを模写していた。自然は欺かれず、人間の智能は、鹿の足痕一つをだに描き得なかった。
昨夜は、この旅行で、初めての野宿で、睡眠不足であったためか、私は眠くなった。風は峡間にどこからともなく漲って来て、樹々の葉は、婆娑婆娑と衣摺れのような音を立てる。峡谷の水分を含んだ冷たい吐息が、頬や腮にかかる。川の水が子守歌のように、高くなり、低くなって、私たちの足音を消して、後から追い冠せて来るときには、一行はまた、森の中の人となっていた。