Classiques japonais avec furigana
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あずさがわのじょうりゅう
山岳紀行文集 日本アルプス
小島 烏水
Lisez 山岳紀行文集 日本アルプス (あずさがわのじょうりゅう) de 小島 烏水 (こじまうすい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 138 795 caractères · 274 écrans
ものはないと言うので、私はふと聞き耳を立てた。嘉門次は穂高山の主だから、別物として、劫初以来人類の脚が、未だ触れたこともない岩石と、人間の呼吸が、まだ通ったことのない空気とに、突き入るということは、その原始的なところだけでも、人間の芸術的性情を、そそのかすものではなかろうか、私は急に習慣の力から脱け出して、栗鼠が大木の幹に、何の躊躇もなく駈けあがるような、身の軽さをおぼえた。
あの黒曜石のように、黒く光っている穂高山! あのやかましやのトルストイの顔のような、深刻な皺を、何十万年となく縮ませている穂高山! 何物をも遠くへ突き放すように、深谷の中で、いつでも、独り坊ッちで、苦り切っている穂高山!
私は是非往こうと決心した、その夜は森の匂いよりも、川瀬のたぎる水音よりも、私の官能は、あの大岩壁の幾重にも乱れ合う拒絶の線の、美しさと怖ろしさを按排した中へ、無理やりに潜り込もうとしては叩き落され、這い込んではずり下って、蜘蛛の糸のように虚空に閃めく寸線にも、触れたが最後、しっかりと捉まって、放すまいとしていた。
二
温泉宿から梓川に沿いて、河童橋を渡り、徳本の小舎まで来た、飛騨から牛を牽いて、信州へ山越しにゆく