Classiques japonais avec furigana
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やぎひげへんしゅうちょう
山羊髯編輯長
夢野 久作
Lisez 山羊髯編輯長 (やぎひげへんしゅうちょう) de 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 51 441 caractères · 102 écrans
二郎氏が貴族風に肩を一つゆすり上げた。苦り切って夫人を睨み付けた。
「だから云わん事(こっ)ちゃない。余計な事をするもんじゃから……」
「イヤ。どうも済みません。その俥(くるま)を利用した僕が悪いんです」
「イイエ。貴方がお悪いのじゃ御座いません。主人が悪いのです」
「コレ。余計な事を……」
「イイエ……」
夫人の眼がギリギリと釣上った。純然たる新派悲劇式の、キチンとした立姿になって主人と吾輩を等分に見比べた。鬢(びん)の毛が二三本ホツレかかってトテモ凄(すご)い。
主人の二郎氏が吾輩にチラチラと眼くばせをした。早く出て行ってくれ……と云いたい意味がよくわかったが、吾輩は出て行かなかった。何だかわからないがトテモ面白かったので……。
夫人は人形のように冷静に、唇を動かした。
「イイエ。申します。どうぞ新聞に書いて下さい。その方がいいのですから……」
見る見る血の気(け)を喪った二郎氏は、万事休す……といった風に頭を抱えてドッカリと安楽椅子(イージイチェア)の中へ沈み込んだ。どうやらこの夫人のヒステリーは天下無敵のシロモノらしい。
冷やかに主人の態度をかえりみた夫人は突立ったまま、両手を静かに揉(も)み合わせた。