Classiques japonais avec furigana
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こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
Lisez 巷説享保図絵・つづれ烏羽玉 (こうせつきょうほうずえ) de 林 不忘 (はやしふぼう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 365 120 caractères · 728 écrans
磯五は、そのお高の視線をしっかり受けとめて、例の、深いえくぼを見せて拝むような微笑になった。この微笑のためには死んでもいいと思った昔のじぶんを、お高は思い出していた。同時に、自分の装のみすぼらしいのが、磯五の前にたまらなく恥ずかしくなってきた。
「こんなところで何をしているのだ」
磯五がきいた。
「何をしていてもいいじゃありませんか。鬼子母神さまへお詣りに来たのですよ。もう帰るのですよ」
そして、往来の見えるほうへ歩き出そうとした。
磯五は、声をたてて笑っていた。それは、忘れていたさわやかなひびきであった。不思議な魅力をもってお高の胸をついてくるものであった。ふとお高は、それにそそられているじぶんを意識した。こころに関係なく、肉体を走りすぎるおののきであった。忘れた磯五のにおいを、その笑い声がお高の中に呼び起こしたのだ。
お高は、蒼くなっている顔をふり向けた。吸われることを望んでいるように、くちびるがすこしひらいていた。
「おせい様はおめえが大好きなようだぜ」磯五が、いっていた。「遊びに寄りなよ。すぐそこの寮に来ているのだ」
「知っていますよ。知っていますけれど、顔出ししなければならないわけが、どこにあるのですか。