Classiques japonais avec furigana
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こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
Lisez 巷説享保図絵・つづれ烏羽玉 (こうせつきょうほうずえ) de 林 不忘 (はやしふぼう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 365 120 caractères · 728 écrans
「あんなに呼ぶのに聞こえねえふりしてじゃらじゃら先へ行きなさる。お前も薄情な罪つくりだな」女はすこしきっとなった。
「あの、お呼びなすったのは、あたしでございますか」
「いまお前が随身門をくぐったときから、おいらあ跡をお慕え申して来たんだ。はははは、いつもながらお前の美しさは見たばかりで胆魂もぶっつぶれるわ。どうぞなびいてやりてえものだが――おいどうしたえ、いやにすましているじゃあねえか」
女はちらと眼を動かした。護摩堂から笠神明へかけて、二十軒建ちならぶ江戸名物お福の茶屋、葦簾掛けの一つに、うれし野と染め抜いた小旗が微風にはためいているのが、雑沓の頭越しに見える。
女はにっこりした。男はぴったりと寄りそって、
「なあ、おきんさんがおいらを見忘れるわけはあるめえ。何とかいいねえな」
「でも――」
「なに?」
「いやだよ、この人は!」がらり、女の調子が変わった。月の眉がきりりと寄ると、小気味のいい巽上がりだ。
「何だい。人だかりがするじゃないか。借金でもあるようでみっともないったらありゃあしない。お離しよ」
とんと一つ、文字どおりの肘鉄をくわせておいて、女はすたすた歩き出した。