Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
じょうしき
常識
豊島 与志雄
Lisez 常識 (じょうしき) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 16 237 caractères · 33 écrans
お酒を下さい。」
お幾は帳場から身をのりだして、眼をまるくしていた。
「まあ……。」
その、冗談ひとつ云わない驚いた様子が、坪井をますます落付かしたらしかった。椅子の上に両肱をついた。
「僕が引受けるから、君は二階にいってて構わないよ。」
そして彼は、岡部にかまわず、お幾にもかまわず、卓子の上に眼を据えて、酒を飲み初めたのだった。いつまでも黙っていた。じっとしていた。岡部はお幾と何やら囁きあって、二階に上っていった。お幾がやってきて、酌をしてくれたが、坪井は口を噤んだきりだった。
徐行する自動車の音がして、やがて、表の硝子戸が開いた時、坪丼は顔を上げた。郁子の姿が、真正面に光を受けて、くっきり浮出していた。紫地に花の押模様の繻子のコート姿が、皺も襞もなくすらりと伸びて、細そりした肩に薄茶色の毛皮の襟巻が軽くふくらみ、顔の輪廓が蝋細工のようにきっぱりしていた。彼女はそこにちょっと立止っていたが、立上った坪井の方へ、足さばきの揺ぎも見せないで滑るようにやっていった。お幾があわてて出て来た時には、彼女は手袋をぬぎながら、坪井へ云いかけていた。
「お一人なの。