Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

まぼろしのかなた

幻の彼方

豊島 与志雄

Lisez 幻の彼方 (まぼろしのかなた) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 41 763 caractères · 84 écrans

Aozora Bunko

それが暫く間を置いて、地の下からのように底深く伝わってきた。そして時々、気合の声か掛声みたいなものが、その深い響に釘を打込んでいった。

初まったな!

そう思うと、がーんと耳鳴りがした。それから一寸ひっそりとなったが、今度は廊下の彼方の秋子の室全体が、麦酒瓶に息を吹込むように、うーッ、うーッ……と唸り出した。それが間を置いては、次から次へと高まっていった。耳にではなく、胸に伝わる響だった。

彼は立ち上った。廊下に出てみたが、急にぞっと身震いがして、また室の中にはいった。どうしていいか分らないで、室の中を歩き出した。真中にある机を足先ではねのけて、八畳の室の隅から隅へ対角線を、しきりなしに往き来した。隅でぐるりと一廻転するのが、初めは何だか変だったが、次にはそれが一のリズムとなった。とんと一つ調子を取るようにぐるりと廻って、それから真直に平らな歩調となり、向うの隅でまたとんと調子を取った。彼方の室全体の恐ろしい唸りが、それと呼吸を合してきた。

生れるのかしら!

何だかこう得体の知れない真黒な力だった。それがのた打ち廻って、張り切って、裂けて、ぶつりと切れた途端に、猫の仔とも犬の仔ともつかない小ちゃな、ころころとした啼声が、一つ甲高に響いた。