Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
まぼろしのかなた
幻の彼方
豊島 与志雄
Lisez 幻の彼方 (まぼろしのかなた) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 41 763 caractères · 84 écrans
秋子は腹痛が遠のいていた。その代りぐったりしていた。
「気分はどう?」
暫く返辞がなかった。眠ってるのかなと彼が思い初めた頃、低いゆるやかな声がした。
「いくらかいいようですわ。」
彼はもう話しかけない方がよいと思った。彼女の額にのっている氷嚢が、びくりびくりとかすかに震えるのを見て、その脈搏の数をはかろうとした。ゆっくりした力強い脈搏のように感ぜられた。
このまま落着いてゆけばもう大丈夫だ!
それで安心して、疲労のためにうとうととした。
夜中にふと眼を覚すと、順一の泣声が耳についた。秋子が半身を起して、襁褓を取代えてやってる所だった。彼はがばとはね起きた。それから牛乳を沸して飲ましてやった。
順一も秋子も眠った。彼も最後に眠った。
翌朝、女中は坪井医学士の許へ便を届けた。午後診察に来るとの由だった。
順造は食事を済し、子供に牛乳をやり、それから庭に出て、狭い地面を歩き廻った。霧を通して射す朝日の光が快かった。植込の下枝の枯れたのを、ぽきりぽきりと折り取ってやった。
十一時頃、坪井医学士が不意に来診してきた。順造はどきりとした。医学士は腹部の診察だけをした。