Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

まぼろしのかなた

幻の彼方

豊島 与志雄

Lisez 幻の彼方 (まぼろしのかなた) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 41 763 caractères · 84 écrans

Aozora Bunko

同じような静かな夜だった。虫の声が聞えない代りに、しいんと凍りつくような底冷が感ぜられた。眼の前の女が、順一の枕頭で看護してる女が、秋子であってくれたら、とふと思ったのが、いやに気分にこびりついてきた。竜子の何だかもやもやとした過剰の肉体から、むず痒いような反感と嫌悪と、また同時に好奇心とを唆られて、彼は不機嫌に黙り込んでしまった。

竜子も黙り込んでいた。寝ている順一の赤い顔が、静かに静かに皺を寄せて、それがしまいには無邪気な微笑に変った。

「あら、何が可笑しいんでしょう。」そして竜子は順造の方を顧みた。「夢をごらんなすってるのかしら……それとも胞衣に引かされてでしょうかしら。」

順造はふいと立ち上った。

夢をみてか、それとも胞衣に引かれてか……その微笑が、底知れぬ闇の中まで、秋子の死へまで、根を張っていた。

彼は恐ろしい場所をでも遁れるような心地で、離れの自分の室へはいった。ことりとの物音もしなかった。彼方の室に、竜子と順一とが居ることは分っていたが、分娩の唸りとも瀕死の唸りともつかない、暗い鈍い底力のある音が湧き上って、腹だけ脹れ上った骸骨の怪物が、影絵のように浮出してきた……。