Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
まぼろしのかなた
幻の彼方
豊島 与志雄
Lisez 幻の彼方 (まぼろしのかなた) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 41 763 caractères · 84 écrans
煖炉の火がいやにかっと熱くて、そのくせ身体は温まらなかった。彼は強いて杯の数を重ねた。腹も空いていた。料理を三四品食べた。
電車が無くなった頃、彼はぼんやりした酔心地で家に帰って来た。寄せられる玄関の戸を押し開いたが、誰も出て来なかった。自分で締りをして、茶の間に通った。火鉢に鉄瓶の湯が沸いていて、茶道具が揃えてあった。茶をいれて飲んだ。
家中がひっそりしていた。鼠の音もせず、人の気配もしなかった。彼は変な気持になった。女中部屋を覗いてみると、女中はぐっすり眠っていた。座敷の方を見ると……喫驚した。
竜子が、順一の枕頭に、石のように固くなって端坐していた。
順一の病気がひどいのかしら、それとも……。
二三時間前のことが、眼にはっきり見えて来た。それを無理に彼は突きぬけようとした。つかつかとはいって行って、順一の横に坐った。手を伸して額に触ってみたが、生温いだけで、熱はなさそうだった。
「様子が悪そうなのかい。」
「いいえ。」と竜子は顔を伏せたまま答えた。
「どうしたんだい。」
返辞がなかった。彼は暫く待ってから、火鉢の方へいざり寄って煙草を吸った。
「旦那様は、」