Classiques japonais avec furigana
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ひかげのまち
幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選
松本 泰
Lisez 幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選 (ひかげのまち) de 松本 泰 (まつもとたい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 52 797 caractères · 107 écrans
殊に態度が気に入らない。私はムッとして相手の顔を視詰めた。男は肩をすぼめて、
「日本人だ。仏蘭西語じゃア通じない」と連を顧ていった。その男は黒の上衣のポケットに純白なハンケチを覗かせた二十七八の小柄な青年である。連は中年の岩丈な船員風の男で、長い口髭を弄りながら、太い声で青年の言葉に合槌を打っていた。二人は以前余程親しい間柄で、久時別れていて、つい其日始めて出会ったらしかった。
若い方は頗る上調子で、
「多分そんな事と思ったよ。女が倫敦にいるとなりゃ、無論大将も近くに潜んでいる訳だ。俺は無駄骨を折って紐育計り探していたが、有難い事だ。運が向いてきたんだ。厭でも応でも今度こそ結婚して貰わなくちゃアならない」
「……他にだって女はあるんだから……厭がる女の後を追うような野暮な真似はやめるがいいぜ。女は諦めて一方にかかろうじゃアないか、その方が間違いなさそうだ。へまをやると両方とも失策ってしまう」連の男は宥めるようにいったが、彼の顔にはありありと不快の色が浮んでいた。
「余計な事は云わぬがいい。俺は一遍思込んだ事は飜えさないのだから、まア俺の細工を見ているがいいよ。