Classiques japonais avec furigana
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かいじんのめ
怪人の眼
田中 貢太郎
Lisez 怪人の眼 (かいじんのめ) de 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 2 772 caractères · 6 écrans
丹治は眼が眩んだようになった。
「このままにしてはおられん、どうでもして逃げねばならん」
丹治は銃を持ち直してその台尻で叩き叩き下へ下へ走った。足に触った雛壇は足をあげて力まかせに踏みにじった。足の力が余ってひっくりかえることがあった。
「くそ、くそ、負けてたまるか」
丹治は狂人のようになっていた。彼はやたらに銃を揮り廻した。
「くそ、くそ、くそ」
何時の間にか丹治の体は雛壇の中から出ていた。丹治はふと足を止めた。藁葺の家が直ぐ前にあって人の声が聞えた。
「茶でも飲ましてもらおう」
丹治はその家へ入って往った。二時過ぎの陽が門口に一本ある柿の木を染めていた。一人の老人が庭前の蓆の上で縄を綯うていた。
「茶を一ぱい飲ましてくれ」
老人は縄を綯う手を止めて顔をあげたが不審そうに云った。
「旦那はどうかなさいましたか、顔色が悪いじゃありませんか」
丹治も今あんな目にあったから己の顔色が悪いだろうと思ったが、何か飲まないとゆっくりそれを話すことができなかった。
「みょうなことがあったが、それは後で話す、まあ一ぱい茶を飲ましてくれ」
老人は頷いた。
「よろしゅうございますとも」